ソフトテニス観戦記

ソフトテニス観戦記、コラム

2019年天皇杯レビュー 絶対王者誕生の瞬間

はい、今回は2019年の天皇杯レビューです。


結果はこちら


優勝  船水・上松
準優勝 安藤・安藤
第三位 内本・内田
    林田・柴田
第五位 村上・林
    桂 ・高月
    山本・池口
    鹿島・井口



えー、色々注目すべき点はあるんですけど、まずはこちら。



絶対王者誕生の瞬間

波乱はいくつかあったものの、大方の予想通り船水・上松ペアが二連覇を達成しました。


二連覇を達成したのは、北本・斉藤、中堀・高川、シノコバに続く4ペア目であり、シノコバが2012年に達成して以来7年ぶりの快挙です。


近年絶対王者と呼ばれ、一時代を築いてきた中堀・高川、シノコバは天皇杯連覇を達成しており、ついに船水・上松ペアもそこに並んだわけです。
(北本・斉藤は時代を築いたとまでは言いませんが、世界チャンピオンとなり、現役引退直前まで活躍したスペシャルなペア。)


船水選手は既に日本シングルス選手権を3連覇しており、絶対王者の地位を築いていましたが、「ダブルスプレーヤー」としてもその地位を盤石のものとしました。


また、今回はそれだけではありません。

こちらのツイートでも言及しましたが




今大会総失ゲーム数7


これは確認できる限り天皇杯史上最高記録であり、如何に今船水・上松ペアが突出した存在であるかを示していたと言えるでしょう。

今大会は台風の影響もあり、丸中・長江をはじめとする有力なペアが序盤で姿を消す波乱が見られました。

ぶっちゃけ、台風の予報が出た時点で船水・上松はかなり不利になると思ったんすよね。

基本的には雨風が激しいときはロブを使う事なく、早い展開で決められるダブル前衛が有利です。

実際、2年前の天皇杯では、船水・上松は雨風の中苦戦し、シノコバに敗れました。

それを踏まえると、今回も丸中・長江、中本・鈴木、または増田・九島のようなダブル前衛を主軸とするペアにとって有利であり、船水・上松は厳しい戦いを強いられると予想してました。


しかし、船水・上松の安定感は群を抜いており、ピンチどころか3ゲームを取ることができるペアすら存在しない結果に。


また、準決勝、決勝では難敵になると予想されていた早稲田勢である、内本・内田、安藤安藤すら一蹴しています。


正直、全盛期の中堀・高川やシノコバでもここまでの安定感を持っていたかは疑問です。


戦いぶりも圧倒的です。
準決勝の村上・林戦を見返しましたが、村上選手がどんなにパッシングをしても船水選手は拾い、ボールが甘くなればすぐさま上松選手がポーチを決める。
では先に攻めればと前衛アタックを仕掛けても、反射神経がチートの上松選手には通用しません。
林選手もかなりポーチを決めてはいたのですが、地力の差が如実に出た試合となっていました。



特別な戦術は必要なく、ただただ強い



船水・上松は、確実にこれからの日本ソフトテニス界を引っ張っていく「絶対王者」となりました。



今このペアを倒し切る選手は日本国内に存在しないでしょう。


○早稲田黄金期揃い踏み

船水・上松だけでなく、内本・内田、安藤・安藤がベスト4に、長尾・松本がベスト8に入り、早稲田黄金期が揃い踏みとなりました。


得に、船水颯人選手vs安藤優作選手の同い年決勝には熱くなったファンも多かったでしょう。

この世代の早稲田は本当に傑出した才能を持つ選手が集まっており、インカレチャンピオンにもなった長尾・松本や、天皇杯チャンピオンの星野選手が一時期は控えに回るほどの選手層を誇っていました。

天皇杯では意外と上位に入る事は少なく、船水・星野が2016年にチャンピオンになったくらいだったので、今回は黄金期の実力をいかんなく発揮したと言えるでしょう。


惜しむらくはここに星野選手がいないこと。
社会人になってからの復活が待たれます。


○ベスト8が雁行陣だけに

非常に久しぶりにベスト8が雁行陣のペアだけになりました。調べていませんが、もしかしたら日本でダブル前衛が導入された2005年以来かもしれません。

上でも書いたとおり、今回は台風直撃であり、ダブル前衛有利かなーっと思ったのですが、丸中・長江、中本・鈴木といった有力なダブル前衛が序盤で姿を消し、三日目に残った増田・九島も敗退しました。

ダブル前衛が有力な戦術としてトップ選手に広まって随分立ちますが、いまだ絶対的な強さを誇るのは日本ではシノコバ位しか出てきていません。

戦術が研究され、インドア以外ではそこまで優位性があるわけではなくなったと言う事ですかね。

○鹿島・井口ベスト8入り

久々に鹿島選手がベスト8に残りました
なんと2009年にベスト4に入った以来10年ぶりです。

2008年に大学2年生で天皇杯を制した鹿島さんも、社会人になってからは苦戦が続き、今年度ついにヨネックスを退社しました。


学生として活躍できても、社会人になった途端練習環境の変化から活躍できなくなってしまう選手は多いです。


鹿島さんもそのひとりだったのですが、故郷宮崎に帰ってから調子を取り戻し、ついに天皇杯ベスト8まで戻ってきました。

ファンとしては、全日本社会人選手権に引き続き活躍が見れ、嬉しい限りです。


○山本・池口ペアが高校生最強を証明

インハイでは思うような結果が出なかった高田商業大将ペアの山本・池口ですが、ベスト8に食い込んできました。 
しかも、上岡・三輪を倒し、内本・内田ペアをあと一歩まで追い込む大活躍となりました。

尽誠学園の白川・石川、米川・大辻と共にこの世代最強はどのペアか議論されていましたが、やはり山本・池口が頭一つ抜きん出ていたかなあというのが今シーズンの印象です。

○台風の影響とNHK録画放送と撮影禁止

今年度も、NHKによる録画放送がある影響で、決勝戦の撮影は禁止になりました。

また、撮影があるためか、台風が直撃している中予備日を活用することなく競技を続行し、プレーに大きな影響を与えました。

この件についてはほんと、議論して欲しいところなので別に書きますが、とりあえず運営は選手ファーストを撤退して欲しいです。


○まとめと世界選手権に向けて

台風直撃、波乱の展開の中絶対王者が誕生しました。

プロとしての重責を払いのけるような活躍をみせる船水選手。そして、ペアとしての責務をきっちり果たした上松選手。

一方、代表組の中本・鈴木、丸中・長江は不本意な結果に終わりました。

不安と期待を抱えながら、今週末の世界選手権が始まります。