ソフトテニス観戦記

ソフトテニス観戦記、コラム

【レビュー】2019年全日本社会人選手権

全日本社会人選手権が終わりました。
結果は以下のとおり

優勝
船水・中本

準優勝
青木・臼井

ベスト4
丸中・長江
船水・中本
青木・臼井
松本・菅野

ベスト8
丸中・長江
箱田・夏見
船水・中本
船水・広岡
青木・臼井
村田・林
松本・菅野
小栗・大友


予想は、まあ半分くらいは当りました。
後半のブロックは波乱が多く読めませんでしたが、前半のブロックはおおむね予想通り。

面白いポイントは色々あったので、それぞれ書いていきます。



○船水颯人強すぎ

中本選手とのペアはドリームタッグであるものの、急造ペアのためコロッと負けることもあり得るかと思ってたけど、危なげなく優勝。

一応苦戦したのは準々決勝の船水・広岡戦ですね。
船水兄がかなり調子良かったため、前半はストローク戦で押され、リードを許しました。

でも、押されても前衛に捕まらないんですよね。
良いボールを打ち込んでこられてもロブで交わすし、ミスがないからそのうち相手が根負けする。

中盤以降も要所では絶対にミスをしませんでした。
逆に、船水兄は打ち勝ってる場面もあるのに勝負所ではミスを重ね、チャンスを逃しました。

ある意味で、これがプロと、それ以外の差なのかもしれません。

相手がどんなに調子よくても、自分からは崩れない。船水颯人選手の主要な大会での勝負強さはここ最近異常なレベルです。

しかも、船水選手はあと、一つ二つギアを残したまま優勝したかなーと。
去年アジア競技大会でキムジヌンと死闘を繰り広げた時みたいな、本気の本気モードになるまでもなかったのかと。
全盛期の中堀・高川と同じく国内ではもう本気を出すまでもないのかもしれません。



○中本選手は船水選手のプレースタイルに合わせた?

船水・広岡戦が特に顕著だったのですが、中本選手はほとんど自分から勝負を仕掛けていませんでした。

中本選手の雁行陣は久しぶりなんですが、例えば学生時代の石川・中本時代とか、NTTの村上・中本時代はもっとオフェンシブに戦っていたイメージです。

この違いはやっぱり船水選手のプレースタイルに合わせたんですかね。

船水選手が大学以降組んだ星野選手、上松選手は共に積極的に自分から仕掛けるタイプではありません。

船水選手の場合、ストローク戦で打ち負ける事はほぼ無いので、自分から仕掛ける能力よりは、甘くなったボールを確実に叩く能力、前衛側を攻められた時にディフェンスできる反応力、ダブル前衛対策のストローク力がペアの前衛には求められます。

星野選手と上松選手もその様な能力を満たしていました。

じゃあ今回組んだ中本選手はというと、やっぱり前述の能力を満たしている、稀有な選手です。

反応速度は上松選手と並ぶかそれ以上。全盛期のシノコバ対策をしていたためか、ダブル前衛相手のストロークも高いレベルにあります。

だから無理に勝負を仕掛けることなく、淡々と船水選手のプレースタイルに合わせる事に徹したのかと。



○増田・九島は敗退続きを抜け出せるか

船水・中本ペアとの激突が期待された増田・九島ペアは元三重高、早稲田のスター鬼頭ペアの前に敗北しました。
鬼頭ペアの実力はもちろん高いですが、それにしたって最近結果が出ない増田・九島ペア。
去年の始め頃は、船水・上松、丸中・長江に続いて国内3強の地位を確固たるものにすると思われましたが、さっぱりな結果が続きます。
二人の所属が違うことで練習があまりできていないのか?
社会人ソフトテニスプレイヤーは時間的成約があり、練習不足に悩まされますが、この二人もそんな問題にぶつかっているのかもしれません。
実力は未だトップクラスではありますが・・・


○番狂わせ色々

準優勝した青木・臼井ペアをはじめ、番狂わせがそこそこ多くありました。
といっても、社会人選手権に出てる選手は大体が元インハイチャンピオンとか、ナショナルチーム経験者とか、トップクラスである事には変わりないので、番狂わせと言うには少し失礼かも。

まず前述の増田・九島ペアを破った鬼頭ペア。

鬼頭さんは三重高時代、2年生でインハイ個人優勝、3年生の時は準優勝で、対戦相手は両方とも的場・宮下という高田商業の伝説的なダブル後衛ペアでした。
同カード決勝が二年連続っていうのは他には見たことがなく、あのの時のインハイは本当にドラマチックでした。

次にNTTの村上・林、東京ガスの小栗・大友ペアを破りベスト4に入った松本・菅野ペア。

菅野さんは優勝した中本さんとのペアで2007年の世界選手権の個人チャンピオンになっているベテラン選手です。
最近では何故か前衛に転向し、松本選手とペアを組んでいましたが、村上・林、小栗・大友を1で退ける強さを発揮しました。
中本選手との元ペア対決も見たかった・・・


○鹿島・星野ペア結成

井口選手欠場の影響で、急遽組まれた鹿島・星野ペア。船水・中本に続く今大会注目のドリームタッグになりました。
元々、船水選手のペアは星野選手になるんじゃないかなあと思っていたので、中本選手とのペアが発表された時は嬉しい半面星野さんが見れず残念に思っていました。
それが偶然にもこの様なドリームタッグで星野さんを見る事ができ、ラッキーだったなあと。

船水・広岡戦を見たのですが、鹿島さんの繊細なボールコントロールは健在で、広岡選手相手に綺麗なパッシングを何本か決めていました。

星野さんも、反応速度と絶妙なタイミングのポーチは相変わらず素晴らしかったです。
基本待ちに徹し、ここしかないというタイミングで鋭いランニングボレーを決める姿はまさに天才。
あんなスタイル、ファンが増えるのも納得ですわ。

ペアとしての相性も良さそうなので、また組んでほしいところです。

○NTT一強時代の終わり?

今年の全日本実業団でも破れたNTTですが、全日本社会人でもタイトルならず、ベスト4にも1ペアにとどまりました。

ここ数年が黄金期過ぎたのもありますが、水澤選手が引退し、長江、村上選手もベテランの粋に入り、世代交代の時期に来ています。

広岡、林、村田選手と若手有望株を取ってはいるものの次の黄金期は少し先になるかもしれません。


○まとめ

波乱はあったものの、全体的には大体予想通りとなった今大会。
印象付けられたのはやはりプロの道を歩んだ船水選手の圧倒的な強さでした。
日本ソフトテニス史上初のプロとして、船水選手は今年どんな成績を残して行くのでしょうか?