ソフトテニス観戦記

ソフトテニス観戦記、コラム

鹿島鉄平選手ヨネックス退社と社会人ソフトテニス界の闇

鹿島選手が今年度一杯でヨネックスを退社することが決まりました。
今後は故郷宮崎に帰ってソフトテニスを続け、決して引退ではないということですが、この世代を象徴する選手の一つの時代が終わったのかなあと。

話はそれますが、昨今では大学生が社会人の混じったトップクラスの大会で活躍するのはもはや当たり前の時代になりました。特に、大学生の間に天皇杯を二回取り、全国シングルス選手権で3回優勝した船水選手は学生優位の今を象徴する選手と言えるでしょう。
また、トップクラスの大会の上位を大学生が独占することも珍しくはなくなりました。

加えて、高校生の活躍も目覚ましいです。
早稲田大学の上松選手は高校時代にアジア選手権、東京インドアを優勝し、天皇杯もベスト8まで残りました。
2015年、2017年の天皇杯ではそれぞれ内本・丸山ペア、上岡・広岡ペアがベスト4に進出しています。

しかし、一昔前は学生が社会人相手に勝ち、大会上位を独占することや、高校生がトップクラスの大会の上位に進出することは異例とまでは言いませんが、珍しいことでもありました。

例えば、2003年の天皇杯では、当時のインターハイチャンピオンであり、同世代と比較しても圧倒的な強さを見せていた的場・宮下ペアは、大ベテランの北本・斎藤に5-1で敗れています。2000年代前半まではインハイ・インカレのチャンピオンクラスでも社会人トップクラスには分が悪かったのです。

しかし、この流れを変えた世代がありました。
それが、平成元年前後に生まれた世代であり、具体的には、後衛なら鹿島選手、石川選手、村上選手、前衛なら柴田選手、中本選手、井口選手、塩嵜選手、長江選手です。そして、その世代の中心にいたのはまちがいなく鹿島選手でした。

中学生で日本一になった鹿島選手は、2006年、井口選手とのペアで高校生ながら天皇杯ベスト4に進出します。前年にも寒河江・森田ペアが高校生ベスト4を達成しているものの、日本代表だった浅川・香川を倒してのベスト4進出は、やはり当時としては異例の活躍でした。
その後早稲田大学に進学し、2007年には全日本シングルス選手権優勝、2008年には塩嵜選手とのペアで30年ぶりに学生として天皇杯を優勝しました。この時の決勝の相手は同じく大学生だった石川・中本ペアです。天皇杯の決勝が学生同士の戦いとなったのは、自分の知る限りだと近年ではこの時だけです。また、この年の全日本インドアの決勝も同ペア同士のカードとなり、こちらは石川・中本ペアが優勝しています。
この他にもインカレ団体戦で4連覇を達成するなど、大学黄金期だったこの世代の中でも圧倒的な戦績を収めました。

今の強い大学生の流れを決定づけたのがこの世代であり、鹿島選手だったのです。

さて、大学を卒業しヨネックスに入社した鹿島選手はどうなったのか。

まったく勝てなくなりました。

まったくというと語弊があるかもしれませんが、少なくともトップクラスの大会で優勝することは一度もなくなり、上位進出がたまに、一回戦負けすら目立つようになりました。

また、飛躍を期待されたこの世代でも、社会人になってから活躍したのはNTTに入社した長江選手、村上選手、最近復活の兆しを見せている柴田選手くらいで、他の選手はだんだんと日の目を見なくなっていきました。

鹿島選手が勝てなくなった詳細な理由はわかりません。ケガや長期的なスランプがあったのかもしれません。
ただ、鹿島選手と同じように、学生時代に活躍したにもかかわらず社会人になってから名前を聞かなくなった選手はとても多いです。

ソフトテニスにプロはありません。実業団に入っても一日の半分は仕事で費やされ、学生のように練習はできません。各企業や県庁に所属している選手がどの位練習に打ち込めているのかは分かりませんが、少なくとも学生の時のように、ソフトテニスだけに集中することは難しいはずです。
学生時代に活躍した選手達が社会に出て消耗し、勝てなくなっていく。
今のソフトテニス界は本当に夢の無い世界なのかもしれません。

林田・柴田ペアの躍進と船水・上松ペアの戦術とか

〇主要インドアの結果

インドアシーズンが終わり、主要な大会の結果はこのようになりました。

 

社会人・学生対校  優勝 船水・上松 準優勝 安藤・内田

東京インドア    優勝 林田・柴田 準優勝 船水・上松

全日本インドア   優勝 林田・柴田 準優勝 内本・内田

熊本インドア    優勝 船水・上松 準優勝 丸中・長江

ヨネックスカップ  優勝 中本・鈴木 準優勝 安藤・内田

 

去年の予想では、丸中・長江、増田・九島、船水・上松の三強が中心になると予想してたんですが、全然外れましたね。

注目ポイントとしてはやはり林田・柴田の躍進ですかね。

 

〇林田・柴田躍進の理由

 色々あるんでしょうけど、まず、柴田選手が完全復活したのが大きいですね。もともと国内トップの前衛なので、復活すればこの結果も納得です。

それと、林田選手が予想以上にダブル前衛に対応していること。林田選手の強みは恵まれた体格からのフォアハンドストロークであり、そんな器用な印象はなかったのですが、最近の試合を見る限りかなり前衛プレーを習得しています。

 

が、それだけで船水・上松に2連勝できるわけじゃありません。色々戦術上の理由もあります。

 

〇船水・上松ペアの戦術とか

船水・上松ペアはなぜ強いのか。

まず、船水選手に注目したとき、目を引くのは圧倒的なフットワーク力です。

単純なストローク力だけだと内本選手、林田選手など、船水選手と互角以上の力を持った選手はいます。ただ、船水選手はフットワーク力が群を抜いており、多少厳しいところを攻められても自分の打点で打つことができます。結果、球足が速くなる外のコートでは船水選手とまともに打ち合って勝てる後衛は今のところ日本国内には存在しません。

次に上松選手。

中学生の時からナショナルチーム入しているスーパーエリートな上松選手ですが、基本的にアグレッシブなプレーはあまりしません。ボレー、スマッシュすべてのプレー精度がまんべんなく高く、反射神経もずば抜けているため、無理な攻めでは上松選手を抜くことはできません。それに加え、少しでも甘いボールが来たら確実に決めきれる正確性も持っています。ぶっちゃけプレーは地味です。

 

で、このペアのの基本戦術ですが、

 

船水選手が相手に打ち勝つ 

    ↓

甘くなったボールや無理攻めしたボールを上松選手が決める

 

これだけです。

シンプル・イズ・ベスト

だけど強い。

船水選手の後衛力を最大限に生かせるこの形がペアの強みなのです。ちなみに船水選手が上松選手と組む前にペアだった星野選手も基本的には自分からあまり攻めませんでした。船水選手にとっては自分が打ち勝てるからチャンスボールを確実に決め、攻められたときしっかり守れる選手が合っているのでしょう。

 

 〇インドアでの戦いと林田・柴田の強み

前述のとおり船水・上松はシンプルに強いのですが、インドアでは勝手が違ってきます。

インドアの特徴って色々あるんですけど、一番は球が止まるのでストロークではなかなか追い込めないことです。それにより、ラリーが長く続き、前衛が勝負する場面が多くなります。

つまり、船水・上松ペア最大の武器である船水選手の後衛力が生かしきれないんですよね。外では追い込むことができたボールもインドアでは返される。そうすることで、普段チャンスのない相手前衛が攻める隙ができる。

ここの隙を最大限生かせるのが林田・柴田ペアでした。

柴田選手は上松選手と違い、アグレッシブに攻めるタイプの前衛です。特にタテの動きは日本随一でしょう。インドアは風の影響がないのでスマッシュでどれだけ決めることができるかもポイントになってきます。そのスマッシュが日本一うまいのは間違いなく柴田選手です。

実際、インドアの試合ではある程度ラリーが続くと上松選手の前に柴田選手が攻め、ポイントを決めていきます。

このへんは試合を見比べると非常にわかりやすいです。

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天皇杯での試合では船水選手に追い込まれた林田選手のボールを上松選手がきっちり決めていますが、全日本インドアでは、船水選手がそこまで追い込むことができず、上松選手より柴田選手が先に攻め、ポイントを奪っています。

今日本の前衛で総合力が一番高いのは上松選手でしょう。あらるゆ陣形に対応したストローク力も兼ね備えた現代型の前衛です。しかし、オフェンシブな部分に限定すると、柴田選手や中本選手とかの方が分があるかなという印象です。

そんなわけで、インドアでは船水・上松ペアの優位性が薄れ、より前衛力に優れた林田・柴田ペアが勝ちやすいということです。やっぱりインドアでは前衛がキーマンになりますね。

 

〇来年度の予想とか

インドアでは林田・柴田ペアが活躍したものの、なんだかんだ船水・上松ペアも2つの大会で優勝しています。来年度ペアが続くのかはわかりませんが、もし続くようなら船水・上松ペアは外での大会は勝ち続けるでしょう。

丸中・長江ペアと増田・九島ペアはどうしたんすかね。対策されているというより、不調が長引いてる感じがして心配です。

2019年東京インドアレビュー

東京インドアを現地観戦に行ってきたのでレビューします。

 

【概要とか、会場とか】

 

〇大会概要

東京インドアは、ソフトテニスの大会では非常に珍しく、東京の中心地で開催される大会で、前年の成績が優秀だったペアが出場し、リーグとトーナメントで優勝を争います。

毎年千駄ヶ谷東京体育館で開催されているんですが、体育館の改修?の影響か今年は駒沢体育館での開催でした。駒沢体育館はコートが2面しかなく、そのせいか出場ペアも8ペアから6ペアに、試合数もその分減っています。

 

〇会場の感想

前述のとおり、試合数が減ったのが残念だったのですが、その分観客席からコートが近く、観戦という意味では大満足でした。というか、普段使ってる東京体育館だと、3階席の場合ボールが見えないんすよね。カラーボールつかえやっていつも思うんですけど、今回はそんなこともなく、大変観戦しやすかったです。

 

【組み合わせと予想】

 

〇組み合わせ

 

Aブロック

船水・上松

丸中・長江

増田・九島

 

Bブロック

中本・鈴木

林田・柴田

安藤・内田

 

〇試合前の予想

Aブロックに現時点で日本トップ3のペアが固まる事態に。今年はAブロックの3ペアを中心回っていくと考えていたので、早速直接対決が見られるのめちゃ楽しみでした。そして、このブロックの覇者がそのまま大会の優勝者になるというのが予想・・・というかその組み合わせ見た大半の人がそう思ったんじゃないすかね。

そんで、予想としては、Aブロックは去年船水・上松に二連勝している丸中・長江を一位に予想しました。前週にあった社会人・学生対抗では長尾・松本に敗れていたり、去年の後半から調子を落としている丸中ペアですが、インドアだし何だかんだ今日は勝つんじゃないかという予想です。

Bブロックは混戦ですが、安藤・内田ペアが少し抜けているかなという印象。

 

しかし、この予想は全て覆されることになりました。

 

【試合レビュー】

観戦できた試合だけレビューします。

 

〇中本・鈴木vs林田・柴田

同年代の天才前衛である中本、柴田選手の対決。その世代からしたらたまらない対決ですね。戦術としては、中本ペアはダブル前衛、林田ペアはダブル前衛も取り入れつつ、どちらかというと雁行陣主体の展開が目立ちました。

試合内容は、途中までダブル前衛の強みを生かした中本・鈴木がリードする展開。しかし、ゲーム2-1とされてから徐々に林田ペアの調子が上向きに。中本ペアは要所でもったいないミスが出て中々決めきれません。最後は4-2で林田・柴田ペアが押し切りました。

中本選手は相変わらずの天才性がでてるんでほんと惜しいです。どうしても、全盛期では考えられなかったミスが目立つんすよね。鋭く動く柴田選手としなやかに動く中本選手の対比はこの試合本当に面白くて、中本選手の完全復活が待ち遠しくなりました。

 

〇丸中・長江vs船水・上松

今大会最も注目すべきカードであり、現時点で日本最強を争うペア同士の一戦。

始まってすぐ気づいたのが、船水ペアがかなり完璧にダブル前衛の戦術を選択していること。後衛の船水選手は日本ナンバーワンのストローカーであり、去年まではインドアでも雁行陣主体の戦術をとっていたのですが、今回はダブル前衛を選択してきました。しかも、そのクオリティがものすごく高い。本職の前衛と見紛うほどのボレー、スマッシュを見せる船水選手。正直、これからも船水選手は雁行陣主体で戦っていくと思っていたのでここまでダブル前衛をものにしてくるとは思わず、驚きました。

試合の方は、序盤は丸中ペアがリードします。さすが、去年全日本インドアで船水ペアに完勝しているだけあって、ダブル前衛の戦術を使うと無類の強さを発揮する丸中ペア。しかし、去年の後半から調子落としていることもあってか、リードしていてもどこか余裕がない様子。ゲーム2-0でリードた後の第3ゲームを接戦の末落とすと、一気に流れを持っていかれます。対する船水ペアは序盤からリードされて余裕を失いません。磨き上げてきたダブル前衛を試すかのようにのびのびと動きます。

ゲームカウント2-2となった後半、余裕のなかった丸中ペアですが、ここで異変が起き始めます。丸中選手のサーブがまったく入らない。カットサーブが命の戦術を選択しているはずが、セカンドを上から打たなければならないほどサーブが乱れます。これ完全にイップスなんじゃないかと思うんですけどどーなんすかね。去年、丸中ペアはダブル前衛なのに憎らしいくらいミスしなくて、それこそ全盛期の篠原・小林ペアを彷彿とさせる強さを見せたんですが、この日は見る影もなかったです。

最後は一気に4-2とされゲームセット。この日の船水ペアの進化は凄かったですが、それ以上に丸中ペアの調子が・・・。去年の丸中ペアとこの日の船水ペアが対戦していたら本当に面白い試合になったであろうだけに残念でなりません。

 

〇丸中・長江vs増田・九島

 船水ペア戦での敗戦で完全に気持ちが切れたのか、丸中ペアは精彩を欠き、増田・九島ペアが4-1で完勝しました。九島選手がイケメンでした。

 

〇増田・九島vs船水・上松

丸中・長江ペアが早々に敗退決定し、Aブロックの1位はこの2ペアで争うことに。確か初対戦かな?増田・九島ペアも去年西日本選手権を制してからは中々調子が上がっていませんが、実績、実力ともに船水ペアとは遜色ありません。好ゲームになるのを期待していたのですが・・・

なんと終わってみれば4-0で船水ペアの圧倒。正直増田ペアの調子は良くなかったですが、それでも異常な強さです。去年の今頃は丸中ペア、増田ペアに少し劣る印象だった船水ペアですが、ここで一気に抜け出した感があります。また、この試合もとにかく船水選手のネットプレーが冴えわたり、本物の天才は何やらせても凄い、ということを見せつけていました。あと、髪型がかっこよかったです。

 

 

このように、Aブロックは船水・上松ペアが決勝進出。対するBブロックは林田・柴田ペアが安藤・内田ペアの棄権もあり決勝進出。

ここまでの戦いぶり、これまでの戦績からみて会場の99%は船水・上松ペアの勝利を確信してたんじゃないすかね。むしろ、何ゲーム林田ペアが粘れるか、そんな雰囲気するしていました。が・・・

 

〇決勝 林田・柴田ペアvs船水・上松ペア

この日の林田ペアはいつもと一味違いました。何が違うって、林田選手がめっっっっっちゃ調子よかったんすよ。柴田選手はまあ普通に好調くらいだったんですけど、林田選手が異常でした。予選あれだけ余裕があった船水ペアが完全に後手に回る試合展開。特に、ストローク戦になったときの林田選手は船水選手を圧倒的に打ち負かしていました。というか、あの調子の林田選手はキム・ドンフン選手にも打ち勝てるんじゃないすかね。とにかく、ものすごいバカ当たりで手が付けられない状態。後衛のバカ当たりというと、2006年に天皇杯を制した森田・香川ペアの森田選手が思い出されるのですが(古い)、その時も当時日本代表だった東・渡邊ペア、花田・川村ペアがベテランの森田選手に圧倒されていました。花田選手なんかどうにもならないよって顔をしていたのを今でも覚えています。そのくらい、この日の林田選手は凄かった。船水ペアは1ゲーム返すのが精いっぱいで終了。林田・柴田ペアが見事優勝しました。

 

【感想とか】

 

〇船水・上松ペアの進化

去年まで、ダブル前衛相手に苦戦していた船水ペアですが、今年からはダブル前衛の戦術も取り入れ、一気に進化しました。このまま篠原・小林ペアの再来なるか?

 

〇丸中・長江ペアの不調

今回の試合見る限りちょっと深刻ですね。特に丸中選手はイップス入ってると思うんで、じっくりでいいんで治していってもらいたいです。長江選手はベテランなのでそんなに長く見ることができないので、引退までもう一花咲かせるところをぜひ見たいです。

 

〇ベテランが優勝はうれしい

柴田選手をベテランと呼んでいいかは別として、最近早稲田をはじめとした大学生勢に押され気味の社会人。去年まではNTTの一人勝ちでしたが、最近は早稲田の一人勝ちモードになってきました。若手が活躍するのはもちろんいいことですが、ベテランが活躍できないスポーツって夢が無いですよね。中本選手、鹿島選手、井口選手、稲積選手、桂選手、高月選手、みんな学生の頃の方が輝いていました。色々事情が察しられますが、そんなスポーツいやじゃないすか?今回の林田・柴田ペアの優勝はそんなムードの中で、本当に嬉しかったです。

【ソフトテニス】2018年天皇杯レビュー

今更やねんすけど天皇杯のレビュー書きまぁす。

 

〇大会前の予想とか

今の男子ソフトテニス界のダブルスって、群雄割拠状態なんすよ。シングルスでは船水颯人選手っていうバケモノが一人勝ちですけど、ダブルスは篠原・小林以降天下を取っているペアがいない。篠原・小林自体、2013年辺りのピークを最後に衰え始め、2015年からは飛びぬけてるペアが不在状態。去年に限っては丸中・長江ペアが無双しましたが、今年度は調子を落としている。なんで、正直どのペアが上位に来てもおかしくないなあと思ってました。

〇それでも優勝候補としてあがる3ペア

とはいっても、ほかのペアよりは頭ひとつ、ふたつ抜けているペアがありまして、それが

丸中・長江

船水・上松

増田・九島

の3ペアです。

2017年度から天皇杯直近までの主要な大会優勝者をみても、

 

2017年度(優勝者)

東日本選手権 安藤・内田

西日本選手権 丸中・長江

社会人選手権 丸中・長江

天皇杯    水澤・村上

東京インドア 船水・上松

社会人・学生対抗 増田・九島

全日本インドア 丸中・長江

2018年度(優勝者)

東日本選手権 船水・上松

西日本選手権 増田・九島

社会人選手権 丸中・長江

 

この通り、ほぼこの3ペアで占められています。

なんで、無難に言ったら優勝はこの3ペアのどこかから出るのかなあって思ってました。去年までだったら、圧倒的に丸中・長江ペアを推してたんすけど、前述のとおり、今年は西日本選手権で増田・九島ペアに負け、国体で鹿島・榊原ペアになんと4-0で負けてるんで、今年はわからんなあと。

このペア以外でいうと、インカレとった安藤・内田ペアが次点で、あとは正直優勝の力があるペアはないと思ってました。例年なら、NTTからもう1ペアくらい力のあるペアが出てくるんですけど、今年のNTTは去年のペアを崩してきたんで、丸中・長江ペア以外優勝は無いって感じでした。水澤・村上と船水・林ならいざ知らず、村上・林と船水・水澤が上記3ペアに勝てるはずないやんと。

 

〇結果

優勝 

船水・上松

準優勝 

中本・鈴木

ベスト4

林田・柴田

村田・広岡

ベスト8

安藤・内田

村上・林

内本・星野

桂・高月

 

この通り、丸中・長江と増田・九島が早期敗退した以外は予想通りとなりました。上松選手は初、船水選手は2度目の栄冠。

というかですね、3日目のベスト8に残った面子見ただけで船水・上松の優勝は決まったようなもんでした。現状船水・上松ペアに対抗できるのは、去年2回、同ペアに完勝している丸中・長江か、めっちゃ調子のいい増田・九島か、同じ大学の安藤・内田くらいなもんです。準々決勝で安藤・内田がファイナルまで食い下がりましたが、そこを乗り越えてしまえば敵なし。準決勝、決勝ともに5-0の圧勝劇でした。

 

〇感想いろいろ

 

・早期敗退した優勝候補

丸中・長江は桂・高月に敗れ、増田・九島は岡本・加藤に敗れて早期敗退しました。

ソフトテニスは、硬式テニスと違いワンセットマッチで勝負がつきます。なんで、調子が悪かったり、ゲームの入りが悪かったりすると、取り戻すのが難しいため、結構な頻度でジャイアントキリングがあるスポーツです。船水・上松もインカレでコロッと負けてますし、まあこんなこともあるかなあと。特に丸中・長江に勝った桂・高月は全盛期こそ過ぎている感がありますが、2013年の天皇杯優勝ペアであり、今年の実業団選手権でも丸中・長江を追いつめているため、勝ったのは不思議でもなんでもありません。岡本・加藤もしかり。ただ、トップ3ペアの直接対決が見られなかったのはちょっと残念でもあります。

 

・中本選手久々の上位入り

元世界チャンピオン、日本人前衛のスター選手である中本選手が帰ってきました。2016年にNTTから福井県庁に移籍して、そっからずっと結果が出なかったんですが、遂に上位帰り咲です。ペアの鈴木選手は高校、大学時代ともに丸中選手と組んでいたオールマイティーなプレイヤーで、中本選手と組んで両者が力を出し切れば、まあ、このくらいの結果はでるかなあと。それでも、船水・上松には手も足も出ず。中本選手途中笑ってたもんね。いや、まあ、あんな中ロブばしばし決められたら笑いもするだろうけど。中本選手が帰ってきてくれたのはうれしいけど、正直全盛期を知るものからすると、ぜんぜん物足りない。これからの活躍に期待なんだけど、NTTに残って、村上選手とずっと組んでた世界をみたかったなあ・・・

 

 ・NTT凋落

去年度は無双したNTTですが、今回の天皇杯はベスト4と8に一組ずつと、期待されていたほどの活躍は見せることができませんでした。理由としては、やはりペアの組み合わせかなあと。昨年の天皇杯を制したNTT2番手の水澤・村上は、実力こそ1番手の丸中・長江ペアに劣るものの、ダブル前衛、雁行陣を使いわけて戦う非常に面白いペアで、優勝はともかくとして、ベスト4には十分入れる力を持ったペアでした。また、3番手の船水・林ペアは純粋な雁行陣のペアとしては国内屈指の実力を持ち、こちらもトップ3以外にはほぼすべてのペアに対して有利に立てるはずでした。
が、今回の天皇杯は、船水・水澤、村上・林というペアリングで臨み、それぞれ内本・星野、中本・鈴木に負けました。

いやね、勝った内本・星野と中本・鈴木はそれぞれ素晴らしいですよ。でもね、正直なんとかならなかったんかいって。別にNTTの肩持つわけじゃないですけど、ある程度観戦歴ある人なら今回のNTTの2番手3番手はだめだなって見る前から分かったと思います。

たぶん、NTTの考えとしては、丸中・長江は不動の1番手。村田選手広岡選手は若手だからとりあえず4番手。2番手の前衛として、去年度までは水澤選手だったけど、衰えと将来性から今年からは林選手がランクアップ。後衛の2番手はまだまだ村上選手だし、船水選手にはダブル前衛も経験させておきたいから、

1番手 丸中・長江

2番手 村上・林

3番手 船水・水澤

4番手 村田・広岡

みたいなペアになるっていう感じだと思うんすよ。

んで、これが結果としては裏目に出たと。ほんとにね、西日本選手権のペアリング(水澤・村上、船水・広岡、村田・林)で勝負してほしかったです。

 

・的場・宮下ペアの復活

伝説の高田商業ダブル後衛ペアの的場・宮下ペアが復活してました。知らない人に説明すると、2002、2003年のインターハイ個人決勝で2年連続、三重高校の鬼頭・大賀ペアとの同一カード決戦を行い、2002年は敗れたものの、2003年はリベンジを果たし、ついでに団体戦も優勝するという快挙を遂げたペアです。今回は一回戦負けでしたが、おっさんにはたまらないペアの復活でしたとさ。

 

・船水・上松ペアは日本のエースとなりえるのか

今回圧倒的な力で優勝した船水・上松ペア。そんじょそこらのペアではもはや相手にすらならない安定感を見せています。

今後はやはり、丸中・長江、増田・九島相手にどれだけやれるかで評価は変わってくると思います。特に、丸中・長江に関しては去年度に二連敗しているので、今年度はリベンジしたいところ。増田・九島ペアとはまだ戦っていないと思われますが、ダブル前衛有利のインドアでの試合が続くこれからのシーズンでは、苦戦は免れないと予想します。船水選手はストロークを得意とする選手なので、これからも基本的には雁行陣で戦い続けるでしょう。ダブル前衛有利な近代ソフトテニスですが、オーソドックスな雁行陣がどこまで通用するのかも見どころの一つです。

 

〇あとがき

次の個人戦の主要大会は東京インドア、社会人学生対校、全日本インドアですかね。冬のシーズンなので、インドアでの戦いが続き、ダブル前衛有利の季節がやってきます。つぎこそは、上位3ペアの決戦が見たいところです。

ソフトテニス、現時点で国内最強の選手は?

はい、最強ってなんやねんって感じですけと゛、単純にダブルスとシングルスの総合力だと思ってください。といっても今はダントツナンバーワンがいるので議論の余地はないのかもだけど・・・

 

解説

 〇船水颯人

現時点で最強です。

日本シングルス選手権二連覇、8月開催のアジア競技大会選考会も優勝とシングルスの戦績は他の選手と比べて頭四つくらい抜けてます。

ダブルスでは上松選手とのスーパーコンビで2016年に天皇杯アジア選手権で優勝。去年はケガもあってかぱっとしなかったものの、今年は東京インドアで優勝、中韓の学生トップ選手を蹴散らし学生王座獲得、東日本選手権優勝、関東大会では安藤選手とのペアで優勝と、ほぼすべてのタイトルをとっています。

シングルスではアジアでもトップクラスの実力を持ち、国内では少なくともあと数年は船水選手の天下が続くでしょう。そして、ダブルスでも丸中・長江、増田・九島くらいしか対抗できるペアは見当たりません。

現時点どころか歴代日本選手の中でも1,2を争うレベルじゃないでしょうか。ここまで突出した能力を持っているのは無双してた時の中堀・高川くらいしか思いつきません(こっちはペアですが)。

ちなみにプレースタイルもかっこいいです。炸裂弾みたいな音するスピードボールに加え、くっそ安定したロブ、駆け引き力、後衛の面白さ、ロマンが詰まった選手でもあります。

顔もよくよく見ると角度によってはイケメンという、特に死角のない船水選手。あえていうなら、なぜかいつまでたってもお兄ちゃんのほうが人気あるくらいでしょうか。

今年のアジア競技大会では、初のシングルス主要国際タイトルなるか。

 

〇長江光一

元国内シングルス最強選手。最近は2年連続で船水颯人選手に日本シングルス選手権の決勝で敗れていますが、実力は健在。また、ダブルスでは丸中選手とのペアで去年度は敵無しの活躍をみせ、船水・上松ペアとの頂上決戦にも2連勝と抜群の安定感をみせました。

たぶんジュニア時代から日本トップクラスを歩んできた長江選手。社会人になった当初はシングルスで結果を出しても日本代表に入れてもらえなかったり、器用貧乏といわれたり大変だったらしいです。しかし、その後の活躍はご存知の通り、日本人初の国際シングルスのチャンピオンであります。

長江選手の魅力はなんといってもフォームの美しさ。ストローク、ボレー、スマッシュと、硬式テニスのフェデラーを彷彿とさせるような美しさがあります。プレースタイルも、パワーで押すというよりは、抑制し、コントロールの聞いたボールを繰り出し、いつのまにやら相手が負けているという非常に洗練された戦いをします。

平行陣、雁行陣、シングルスと弱点のないスタイルであり、船水選手には劣るものの総合力で国内トップ選手であることは間違いありません。

顔は猫ににています。

 

〇上松俊貴

小中高大と日本一になり、まだ高校生時代の2016年には船水選手とのペアでアジア選手権を制しています。中学生から日本代表入りをしていた、まさに日本ソフトテニス界のスーパーエリートです。

シングルスでも、アジア競技大会予選で船水選手をあと一歩まで追い詰めるなど、スタイルのとらわれない強さを見せる上松選手。昔のほうが強く感じたとか、プレーが意外と地味とかたまにディスられますが、これからの日本を背負って立つ選手でしょう。

この選手も長江選手と並んでフォームが非常にきれいです。フォームがきれいな選手は社会人になっても生き残り率が高い気がするので、やはり、そういう器なのかもしれません。プレースタイルとしては、まんべんなくすべてのプレーの質が高いです。ほんと、芸術品みたいなローボレーをします。あと、反射神経がめちゃはやです。今年の東京インドアでは、村上・水澤ペア相手に曲芸みたいな連続ボレーでポイントをもぎ取ってました。一度でいいからあんな主人公みたいなプレーをしてみたい!・・・

顔は昼間の池袋で見かける大学生みたいな感じで、あんま主人公感はないです。

 

感想

ちょい前に最強だった長江選手、現在敵無しの船水選手、将来性抜群の上松選手というラインナップでした。

この3人に次ぐ選手は現れるのでしょうか。広岡選手あたりに期待。

 

 

 

ソフトテニス、ダブルス強さランク(平成30年7月時点)

7月時点でのソフトテニス国内ダブルスの強さランクを考察

 

ルール

 ・昨年度から7月までの大会成績で判定

 ・同ランク内は左に行くほど強い

 ・解散、引退のペアは₍₎表示

 

ランク

S 丸中・長江

A+ 船水・上松 増田・九島

A 水澤・村上 船水・広岡 (篠原・小林)

B (船水・林)安藤・内田(上岡・広岡)桂・高月

C 長尾・松本 本倉・丸山 林田・柴田 丸岡 金子

 

主要ペア解説

〇丸中・長江(NTT広島)

昨年度主要な大会ではわずか2敗、しかも負けたのは同じNTT広島の村上・水澤、船水・林だけという、まさに無双の活躍。

おそらく現時点で日本ナンバーワン前衛の長江と、東北高校時代からダブル前衛として活躍していた丸中のペアは、全盛期篠原・小林ペアを彷彿とさせる強さを見せた。

というか、こんなチート二人組ませるなや、っていうペアでもある。

日本の次期エース、船水・上松ペアにもインドア、屋外で共に圧勝し、隙が無い強さを見せた。

特徴としては、日本人のダブルスとしては珍しい徹底したダブル前衛で攻める戦略をとる点。また、シングルスでも日本屈指の実力を持つ二人は、どんなゲーム展開になっても切り開けるという、特に弱点のない完成度の高さも持つ。

唯一、長江がそこそこ歳なのと、人気がいまいちなのが弱点か。

 

が、直近に行われた西日本選手権では増田・九島ペアにG2-4で敗北。

早速劣化したのか、増田・九島が強くなったのかはわからないが、今年度も昨年度同様活躍の活躍を魅せられるのか。

 

〇船水・上松(早稲田大学

2016年アジア選手権のチャンピオンであり、日本の次期エース。

29年度はインカレ、天皇杯等主要な大会で結果を残すことが出来なかったが、

30年度に入ってから、大学王座、東日本選手権と連続して優勝。それも、圧倒的な成績で優勝しており、活躍が期待される。

後衛は現在国内シングルス最強選手である船水颯人。前衛は中学生時代より全日本入りしてきたエリート上松。こいつらもチート同士がくっついたペアである。

オーソドックスな雁行陣を主体に戦うが、コートの状態やインドアではダブル前衛も選択する。

が、このペアは、やはり船水のスピードボールが生きる雁行陣で戦える時が強い。雁行陣で戦っても丸中・長江以外には互角以上で戦える希少なペアである。

ちなみに、上松選手が中学生時代にこのペアで当時国内最強だった篠原・小林に勝っている。

 

 

〇増田・九島(和歌山県庁・ミズノ)

社会人で唯一、NTT西日本に対抗できるペア。

直近の西日本選手権では、NTT3ペアを破って見事優勝。

増田は、長身から繰り出されるサーブと、前後両方で対応できる完成度の高さが強み。

九島は顔がイケメンでスマッシュがはやい。

ダブル前衛を選択して戦っているものの、やはりこのペアも何やらせても強い。増田は2016年のシングルスチャンピオンでもある。

社会人では、ほぼNTTが上位を独占している今日のこの頃、その牙城を崩すことができるのか。今年の活躍に期待。

 

〇水澤・村上

昨年度の天皇杯チャンピオン。

どの大会でも必ず上位に入るが、なかなかナンバーワンにはなれない不遇のペア。

と、思ってたら天皇杯ではあれよあれよというまに優勝。ソフトテニス界のシルバーコレクターである村上選手の悲願達成である。(一応、名誉のため、村上選手は2015年の全日本社会人と西日本選手権で優勝してます)

が、天皇杯以後は2位、3位がほとんどであり、西日本選手権も増田・九島に敗れての2位。

また、どんだけ成績残しても人気が全く上がらないペアでもあり(俺調べ)試合動画がユーチューブに上がっても相手ペアの話題しかコメントが残らないやっぱり不遇なペアである。

プレースタイルとしては、両選手とも元後衛の強みを生かしたダブル前衛であり、雁行陣、前後の平行陣を使い分ける多彩な戦術が魅力。というか、このペアの試合は生で見るとめちゃ面白いからダブル前衛嫌いな人も見てほしい。

さんざんディスったけど一番好きなペアなので今年も頑張ってください。

 

〇船水雄太・広岡(NTT西日本

ソフトテニス界人気ナンバー1,2(俺調べ)が組んだ奇跡のベア。

西日本選手権で公式戦初お披露目。早速優勝した増田・九島にファイナルまでもつれ込むなど、ポテンシャルの高さを見せた。

強すぎてアンチの多いNTTでもこの二人だけは別。今年度のソフトテニス関連のユーチューブの再生回数はこいつらが奪い去っていくだろう。

 

〇安藤・内田(早稲田大学

早稲田大学の二番手。もともと三番手だったが、内本・星野ペア不調とケガのため昇格。

昨年度の東日本選手権は桂・高月に圧勝して優勝。今年度も準優勝と、結果を残し続けている。

安藤は船水、内田は上松とそれぞれの代に圧倒的な選手が居るある意味不遇な立場であるが、実力、ポテンシャル共に日本トップクラス。あと、安藤選手はフォームがかっこいいからすき。

 

〇桂・高月(ヨネックス)

NTT以外で唯一活躍している社会人ペア・・・だったんだが、増田・九島にその座を奪われ、日本代表も落選と最近ぱっとしないペア。

平成25年度の天皇杯優勝ペアだが、どう考えても学生のときのがつよかったよなあ。

その辺、ソフトテニス界に根深い問題があることを思い出させてくれる存在。

 

〇長尾・松本(早稲田)

早稲田の三番手。元々四番手だったが(略

安定して強い。だけど地味。

 

〇本倉・丸山(明治)

昨年度インカレチャンピオン。学生では数少ない早稲田勢に対抗できるペアである。

丸山選手は内本選手と組んでた上宮高校時代に天皇杯三位になるなど、将来を期待されていた選手であったが、 本倉選手と組んでからは(期待の大きすぎるゆえか)そこまでの成績を残すことができず、ユーチューブにて態度が悪いとかさんざんディスられている。

本倉選手はまじめそうな雰囲気から繰り出される重心の低いショットと眉毛の太さが魅力。

 

 

感想

たぶん今年は船水・上松、増田・九島、丸中・長江を中心にまわっていくでしょう。

篠原・小林に次ぐエースはいつ誕生なるかなあ。